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新たな視点から死刑制度の本質を問う

『死刑肯定論』 森炎氏インタビュー 2015年03月06日(Fri)  本多カツヒロ (ライター)wedge infinityより無断転載
強調文
 1994年以降、内閣府が5年ごとに行っている世論調査では、死刑制度容認派が90年代は70パーセント台、00年代に入り80パーセント台と高い数字が続いている。しかし、袴田事件のように死刑判決を受けたが、再審開始が認められ釈放された例もある。また世界に目を向けると、ヨーロッパを中心に死刑廃止の動きもある。
 死刑の根拠とは何なのか。日本の死刑制度に問題はないのか。『死刑肯定論』(ちくま新書)を刊行された元裁判官の森炎弁護士に話を聞いた。

――裁判員裁判が始まり、一般市民も死刑という判断をしなければいけない状況になっています。森先生も裁判官時代には、殺人事件などの凶悪犯罪に接していますね。
森:裁判官は死刑制度がある以上は適用せざるをえないですし、死刑制度に反対だからといって死刑判決を出さなくていいとはならない。また、裁判官は死刑制度があることを承知で任官し、自ら国家権力の中に入っていっているわけです。

 ただ問題なのは、それと同じことを裁判員にも求めることです。つまり、死刑制度があることを前提にして考えてくださいというやり方です。死刑制度があることを前提として、それ以上は深く考えないでくださいと。死刑制度が良いか悪いかという根本を考えさせないのは、すごく不自然ですし、本質を考えさせないようになっている。

――本書でも先生は死刑制度について、確信的死刑肯定論者の立場だと表明されていますが、そうだとしても日本の死刑制度の問題点とはどんなところでしょうか?
森:本書でも言いたかったことのひとつであるのですが、「悪性」を理由とする死刑判決が多いことです。

 刑罰制度は、犯罪者の悪性と表裏一体の関係にあります。しかし、生命刑だけは違うのではないかという深刻な疑問があります。悪性を理由として生命刑を適用すると刑罰制度や法制度から外れてしまう面があります。悪性に対処するためだけならば、終身隔離で足りるわけですから、生命刑の必要性は基礎づけられない。それでも生命刑を用いるというのであれば、そこに隠された目的や動機が問われます。悪性を理由とする死刑を肯定することは、極端に言えば絶滅政策や民族浄化と同じなのではないか。それと同じ志向があるのではないかということです。しかし、日本の死刑判決の現状として、悪性を理由による死刑判決は非常に多く、大きな問題だと思います。死刑制度を使わなくて良いところで適用している可能性があります。

――それはたとえば、本書にも01年に起きた弘前の消費者金融放火殺人事件の判決文が取り上げられています。この判決では、被告に対し苛烈な人格否定をしていますね。
森:事件の概要は本書を読んでいただきたいですが、判決文を見ると、犯罪行為から離れた人格攻撃と感じられるでしょう。日本の死刑判決にはそうした傾向があります。つまり、悪性が主たる根拠になっていて、極論すれば「どうしようもない人間」だから死刑にしてしまうということです。日本の裁判官の死刑適用は悪性中心ですから、それを判決文で強調しないと技術的に死刑の結論に至らないという面さえもあります。

――犯罪者の悪性を理由とするというのは、最近何かの問題が起きると、一斉にみんなで叩き、排除するのにも似ていますね。
森:そうですね。排除の理屈が悪いとまで言うつもりはないのですが、そういう考え方で生命を奪うとなれば、また別です。

――死刑廃止論者の主張には、冤罪で死刑が執行されてしまった場合を問題視する声もあります。
森:日本の裁判所では、戦後4件、死刑冤罪が出ています。冤罪なのに死刑が確定していたケースですね。この4件については、司法当局も正式に冤罪で死刑を確定させていたことを認めています。これらは、死刑確定後執行前に冤罪が判明して、辛くも救済されたものです。その4件自体も最高裁が再審の要件を緩めた途端に、1970年代後半から80年代にかけてたて続けに出たわけです。その後は、下級審の運用を通じて再審の要件は再び狭められて、現在に至っています。ですから、死刑冤罪が実際にどれだけあるのかは、わかったものではありません。死刑制度を肯定するならば、自らも冤罪で死刑になる覚悟がなければ一貫しないと言えます。

――今年1月に内閣府が発表した「基本的法制度に関する世論調査」では、死刑を容認している人の割合が8割を超えていました。一方、ヨーロッパを中心に死刑制度を廃止している国もあります。この違いについてどうお考えですか?
森:日本の場合、本当に8割以上の人たちが死刑に賛成している実態があるのかどうか。つまり、ひとつには、死刑存置に対する積極的な支持なのかどうか。もうひとつは、死刑制度について議論されていない状況があります。死刑存置にハッキリした根拠や支えがあるのかという観点で、どれだけ考えられているのか。それはこの本を書いた理由でもあります。

 日本では、死刑制度を存置しているアメリカに比べ、死刑判決自体の数も少ないですし、乱発しているイメージもないので、一般市民も死刑存置も悪くはないという程度で、多くの人たちはあまり深く考えてはいないのではないかと思うんですね。

 ただ、とはいえこの8割という支持は圧倒的で、死刑廃止を支持する人たちは1割にも満たないわけです。日弁連は、公式に死刑廃止の立場をとり、運動を展開していますが、今のところ全く効果を表していない。仮に、死刑廃止を目指すのであれば、死刑を容認している民意が、どこに根拠があるのかを明確にし、それに対して社会思想のレベルで答えないと、事態は全く動かないわけです。

 またヨーロッパでの死刑廃止の流れについては、私も一般的な書籍しか読んでいませんが、ひとつにはEU加盟に死刑廃止が事実上の条件とされていることもあげられます。

――裁判員裁判で、一般の方も死刑かどうか判断する場面に遭遇しますし、もっと死刑に関し議論が深まらないといけませんね。
森:市民に議論してくださいと言っても、みなさん仕事があるわけですし、現役の裁判官は権力の中にいますから、本やブログでオープンな議論を供することはなかなか難しい。

 これまでにも『なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか』(幻冬舎新書)では、日本の死刑判決の歴史や基準、また『死刑と正義』(講談社新書)では裁判員として裁く立場になった場合に、どのように判断すれば良いかなど、死刑に関する本を執筆してきました。

 今回の本では、もう少し抽象的な議論が主ですが、死刑制度の是非自体を直接に論じました。死刑問題を考える上での根本的な議論をするための材料になってほしいと思います。

 私がどのような理由で死刑肯定論者であるかは、その道筋にこの本一冊を費やしましたので、本を読んでいただくほかないのですが、ここで死刑冤罪の問題についてだけ、補足して述べたいと思います。

 日本の刑事司法制度は、有罪率が極めて高く、有罪率99.9%前後という極端な抑圧的状況を30年以上も続けてきました。このような刑事司法のもとでは、冤罪が正しく救済されることを期待しても、土台無理なことです。だから、死刑冤罪だけをガタガタ言っても、始まらない。われわれは、冤罪で死刑にされたり、無期懲役にされることを覚悟するほかないのですね。裁判所に期待しても99.9%ダメなのですから、それなら、裁判所自体を批判して死んでいったほうがましです。その覚悟ができれば、死刑肯定の立場になり得るし、その覚悟がないのに死刑肯定を言うのは、とんでもないことです。今回の本で提供したような死刑制度についての考え方の材料を全てオープンにし、死刑を根本までさかのぼり判断すれば、死刑を良しと判断する人は非常に少なくなるとは思います。死刑肯定論の確たる根拠はいくつもあるわけではないですから。

 実際、裁判員制度が始まってから死刑判決は平均で年4件程度しか出ていない。それがたとえば、毎年0件か1件と数年続けば、死刑廃止の方向になりうる。というのは、裁判員の判断は、この問題に直面して考えた場合の具体的な民意と言えるので、世論調査の結果がどうであれそういう方向にもなりうると思うのです。

――死刑を肯定する論拠として、我々はつい被害者感情を考えてしまいがちです。
森:それは議論する材料が少ないだけだと思います。私が不満に思っているのは、思想哲学の世界で、死刑についてまともに取り上げてもらえないことです。法律学、特に刑法学は、思想哲学の下位の学問ですから、思想哲学で論じられたことを前提として組み立てられている。もしかしたら、思想哲学の世界では、死刑制度は法律の世界の問題だとなっているのかもしれません。あるいは、死刑廃止論の中に閉じこもっているのかもしれません。

――思想哲学を専門する方々の他に、どんな人たちに関心を持ってもらいたいでしょうか?
森:本来ならば多くの人たちに関心を持っていただくのが一番ですが、なかなか今の状況では期待できません。ですから刑事弁護を専門にしている弁護士に、裁判員裁判に参考になるなと思ってもらえるといいですね。繰り返しになりますが、裁判員裁判は死刑制度があることを前提に判断されていますが、それでは本当はまずいのです。死刑の根拠がどこにあるのかどうかという制度論まで議論を深めてもらえればと思います。

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