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EUが日本に「人権条項」を要求 その背景は? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語

<マイナビニュース2014.5.24より無断転載>
 戦略的パートナーシップ協定(SPA)の交渉で、欧州連合(EU)が日本に対して「人権条項」の設置を要求し、日本側が反発しているとの報道がありました(時事通信、5月5日)。SPAの人権条項とは、日本で人権侵害などが起きた際に経済連携協定(EPA)を停止できるというものです。
 人権侵害というと開発途上国のイメージが強いですが、EUは日本の死刑制度をたびたび批判しています。人権をめぐる日本の現状はどうなっているのでしょうか。

死刑制度は世界の非常識か
 2009年の内閣府による世論調査では「場合によっては死刑もやむを得ない」が85.6%で圧倒的多数を占めました。この質問そのものが「死刑賛成」とストレートに結びつくか疑問もあります。特に「場合によっては」の部分。ただ「容認」であるのは確かでしょう。理由の上位は「被害者や遺族の気持ちがおさまらない」「重大犯罪は命で償うべきだ」「犯罪を抑止する効果がある」などです。

 これに対して国際世論は死刑制度はともかく執行の停止の方向へと動いています。2007年の国連総会では「死刑執行の一時停止」決議が採択(採用)されました。翌年には国際人権規約(国連が1966年採択。日本は79年に原則批准)委員会が確定死刑囚の扱いの改善や執行日時の事前通告を日本政府に勧告しました。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの調べだと死刑廃止国(事実上の廃止も含む)は世界の3分の2。執行しているのは約20か国に過ぎません。死刑執行数の断トツ1位は中国で、イラン、イラクなど中東の国が多く含まれます。イスラム諸国は欧州の法制度とは別の「イスラム法」に依拠するためです。先進国で制度が存在して執行が行われているのは上位10か国のうちアメリカと日本ぐらいです。

 ただアメリカの場合は州によって異なり、死刑制度がある州も執行する日や方法などを本人はもちろん家族や被害者遺族、マスコミにまで公開し、執行の立ち会いまで多く許されます。「正しい死刑のあり方」を常に議論しているのです。死刑囚への取材も正規の手続きを踏めば可能です。

 それに対して日本では取材など到底無理。執行は当日の朝に本人に知らせる仕組み。以前は事前通告していたのですが、今は自殺防止など「心情の安定」などを理由に当日となっています。国際人権規約委員会の勧告はまさにこの点を突いています。廃止派の主な主張は「生きてこそ償える」「国家だからといって『殺人』は許されない」「冤罪(ぬれぎぬ)であったら取り返しがつかない」などです。

捜査手法にも国際的な批判
 刑事訴訟法では警察の留置が原則48時間(2日)までで、警察が「裁判を起こしてもらうか判断するに足りる」と考えたら検察庁に身柄が移されます。検察の取り調べは原則20日間までで、そこまでに起訴(裁判にかける)かどうかを決めます。日本の刑事裁判の有罪率は99%以上。ゆえに検察の起訴か不起訴かとの判断はまさに運命の分かれ道となります。この間、容疑者(罪を犯したと疑われる者)は基本的に外部と接触できません。

 この制度を評価する側は、検察官がじっくりと人間関係を築き、精密に調書を作成できる。何もかも起訴する訳ではなく警察から送られてきても嫌疑がなかったり不十分であればしないし、あったとしても情状の余地などがあったら起訴猶予にする。検察が有罪の自信がある案件だけを裁判にかけているから有罪率の高さは当然だと主張します。

 それに対して反対側は警察・検察の取り調べは「密室」であり、自白を強要されてもわからない。「認めれば裁判で有利になるよ」などと誘われたらぬれぎぬでも「自供」しかねない。それを防ぐにはイギリスやフランスのように取り調べの全過程を録音・録画する可視(見える)化を法で義務付けよと訴えます。

 可視化は国連規約人権委員会も日本に勧告しました。それに慎重な意見の多くは「可視化したら供述が引き出しにくくなり、本来求められている真相究明に滞りが出る」「法制化したら捜査員や検察官が萎縮する」です。

 検察の取り調べ段階で否認すると起訴後も保釈されない「未決勾留」も問題視されています。刑事訴訟法は起訴後の保釈請求を原則として「許さなければならない」としています。しかし実態は起訴内容を否認したり黙秘するとたいてい認められません。重罪の容疑の場合は認めてもダメです。結局、捜査機関に勾留されたままになって事実上「懲役スタート」のようになってしまいます。反対する側は「原則と例外の逆転だ」とし認める側は「逃亡や証拠隠滅の恐れがあるから仕方ない」と主張します。

国連が指摘する日本の人権侵害
 国連が指摘した人権侵害は他にもあります。女性差別、障害者差別、同和問題、子どもの権利侵害、先住民族(アイヌ)差別など。これとは別に法務省の人権擁護機関は性的少数派(いわゆるLGBT)や原発事故での被災者差別などを課題として取り上げています。女性差別は出産・育児の段階で退職してしまうM字カーブ問題(OECD加盟国でこの傾向が見られるのは他に韓国ぐらい)、男性は育児休業の取得率は2012年で1.89%という極端な少なさ。8割が取得するスウェーデンと比べるとゾッとするほど低いのです。女性管理職の比率11.1%も欧米に比べるまでもなく低く、フィリピン、シンガポール、マレーシアの後塵をも拝しています。

 障害者差別は2014年1月に障害者権利条約をやっと日本が批准したというありさま。同和問題も就職や結婚で相変わらず根強く、子どもの相対的貧困率は6~7人に1人で1人親家庭のそれは半分以上と先進国中最悪。2013年に「子どもの貧困対策法」ができました。

 いじめや体罰、虐待は人権擁護機関が救済にあたります。アイヌ民族にかつてアイヌ語を禁じるなど同化政策を強制しました。今はそうした行為は行われてませんが、大学進学率が全国平均の約半分に止まるなど生活や教育の格差は解消しておらず、それに向けた立法も遅々として進みません。

 LGBTに関しては欧米が相次いで同性婚法やパートナ法を成立させており、同性愛を認めないカトリックが多いフランスでさえ2013年に合法化しました。日本でも、という動きはあるものの具体的な法案準備段階まで至っていません。

 「難民鎖国」も世界から白い目で見られています。難民とは人種、宗教、国籍、政治的意見などを理由に迫害される恐れがあ」るために「他国へ逃れる」しかない人々で、それ自体が重大な人権問題です。2012年の申請者が約2500人に対し認定したのは18人。別途法務大臣の裁量で在留資格が与えられた人も100人程度。欧米先進国の年間数千から数万という受入数とは比較にならず「鎖国」と批判されています。2010年からはタイへ脱出したミャンマー難民を受け入れる「第三国定住」をアジアで初めて行うなど対策は講じています。
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■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】(http://www.wasedajuku.com/)
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